５日目
５時すぎに起きるとまたも日の出は終わっており残念だったが、輝く海が綺麗だ。今日も天気は良さそうで、睡眠時間もたっぷり取ったし、走る意欲がブリブリと沸いてくる。空気はひんやりしているが太陽の光は案外強力で、テントと寝袋はすぐに乾いてしまった。よっしゃ〜出発だ出発だ！
海沿いに４２号線を北上。早朝のため車が少なく、気分ノリノリ、スピードアップ。ちっとも疲れないうちに紀伊長島に到着し２６０号線へ分岐。道がだんだん細くなり、これじゃまるで昨日の４２５号線だ。気分が滅入ってくる。錦峠のてっぺんに幅２メートルのトンネルがあると地図に書かれているのだが、それは誇張ではなく本当に２メートルほどしか無い縦長のトンネルだ。ここまでトラックと何台も通りすぎたんだがなぁ。少なくともミラーを折らなくては通過できないだろうなぁ。
絶景かな英虞湾
幸い細い道はあまり長くは続かず、海に出た。漁港の脇を快調に飛ばし横山展望台に到着。英虞湾（あごわん）を一望すると、この陽気で多少霞んではいるものの絶景だ。子供の神様がいたずらで創ったような地形だなぁ。この展望台は人も少なく静かで落ち着いた場所だった。気に入った。
山を降り、パールロードに乗った。休日はスペイン村渋滞があるらしいが、この日は快調。気分よく飛ばせる上に展望台からの眺めが横山以上に素晴らしく、９３０円も納得のグッドな道で気分も高揚。おまけにＴシャツ１枚で心地良い気温、う〜ん、今日は最高だぁ！
「ウソだろ〜」の２Mトンネル、横山展望台から望む英虞湾、爽快なパールロード
伊勢志摩スカイラインに乗るつもりで居たが４２号線が快調なのでそのまま伊勢まで行ってしまった。迷うことなく伊勢神宮に到着。さすがに人が多い。年配者が多いな。平日だもんな。橋を渡って見渡すと、ずーっと遠くまで白い砂利道が続いておりクラッとくるが、実はそこから見える３倍の距離を歩くことになる。散々歩いていよいよ御神体を拝む事になるのだが、仏教と違い御神体は扉の閉じられた建物の中にあり、しかも拝むのはその建物からずっと手前。おまけに眼前には大きな白い布が垂らされているので建物自体も風が吹いた時にちらりと見えるだけだ。そんなにありがたがってどうする。お寺の方が好きだなぁ、オレは。
なんだかなぁー、と神宮を出るとすぐにうどん屋さんがあったので、伊勢うどんを食べてみた。汁も具も無いうどんだ。汁は無いがタレのような物がかけられている。せんべいを焼く時につけるタレはきっとこんな味だろうと思う、甘味を感じる醤油味だった。うどん自体もうまく、タレとマッチしている。多少ゲテモノ気分で食べたのだが予想以上にうまかった。４００円は少し高く思えるけれど。
伊勢神宮の長〜い砂利道と、伊勢うどん
トラックまみれだ２３号線
２３号線で北上、しばらくは快調に飛ばせるが、津を過ぎたあたりで急に道が混んでくる。四日市あたりが最も混んでいて、ツーリングといった風情は微塵も無い。「四日市＝喘息」という短絡的なオレの知識も、あながちハズレではないな。ほとんど動かないトラックの脇をのろのろと進んで行く。迷路をさまようネズミのようだ。浴びるディーゼルの排気ガスが腹立たしいったらありゃしない。は〜、くたくただ〜。クラッチを握る左手がバカになってきた。
自販機コーナーを見つけ、またもアスファルト上で仰向けに倒れこみ、見上げると汚ねぇ空だ。だがオロナミンＣを買い、飲んでみたら少し元気が出た。気を取り直して名古屋に向かう。
名古屋に入るとさすがに気分も持ちなおし、４時半頃にようやく名古屋城脇のＫＫＲに到着。シャワーで排気ガスを洗い流し、ぐびっとビールで生き返る。今日はオレの所属するパティオのオフ会が名古屋駅近くで６時からあるため、ゆっくりする間もなく出発。テレビ塔あたりの雰囲気が好きだったので歩いて行ってみたのだが、以前と違いホームレスのテント小屋が立ち並んでいており、昔の面影はちっとも無い。う〜ん、誰を責めればいいのだろう。淋しいことだ。
オフ会なのだ
おっと、時間が足りないぞ、と地下鉄で名古屋駅に向かいギリギリセーフで会場に到着。名古屋のトンカツさん（雷怖い佐渡島・３日目を読みなさい）、豊橋の山さん、三重県は川越町のヒロさん、そして金沢のすーさん（雷怖い佐渡島・５日目を読みなさい）と、広い範囲の、そして広い年齢層の方々が集まった。
・しかしなんとトンカツさんの奥さんの親御さんが亡くなったとかで、今夜がお通夜なんだと！「申し訳無いけど１時間で帰ります」なんておっしゃるのだが、そんなことなら来ることないのに、それでも顔を出すところがさすが、スゴイなぁ。それでもトンカツさんは「葬式よりもゴルフに行きたい」などと不謹慎なことをおっしゃる。オイオイとツッコミを入れるのだが、トンカツさんったら気を遣ってるんだろうなぁ。１時間などあっというまで、すぐに「さようなら」
・すーさんも東京から帰る途中に参加しているので、電車の時間を気にしながらの慌しい飲みとなってしまった。去年金沢で「明日は横浜に帰りなさい！」なんて言われちゃったけど今日は怒られないだろう。だって明日横浜に帰るんだもんね！と思っていた。しかししかし、ところがどっこい「そもそも女房子供を置いてフラフラ遊びまわるのはけしからんぞ！」と、やっぱり怒られちゃったよ、わはは！すーさんもあっという間の２時間で「さようなら」
すーさんとトンカツさん、熱くラーメンを語るヒロさんと山さん
・残った山さん、ヒロさん、と３人で飲んだのだが、いつもは寡黙な山さん、少し酔いがまわったのか、こんなに話すのは初めて見たよ。現役時代は日立でステレオを作っていたそうだ。オレの妻は結婚前、日立に勤めていたので、同じ会社で働いていたわけだ。しかし上司とのソリが合わずに５０で退職、その後チリ紙交換をしていたんだってさ！面白い人生だなぁ・・・結構ハイピッチで飲んでいて、帰る頃には少しふらついていた。大丈夫かな。
・ヒロさんは熱い語りが面白い。メダカ愛好者で清掃局に勤めているということもあって、環境問題を熱く語るのだ。そこまでは初めて会った時の印象と変わらないのだが、ヒロさんはラーメンの麺を茹でることに命を賭けているようで、「たとえインスタントでもシコシコに茹でるのだ！１人用と２人用では鍋も違うのだ！」と、変な事にも熱いのだ！「麺が吸う水分量も計算して５００ｃｃとちょっと水を入れるのだ！」と言うので、「しかしソレは吸う分も含めた上での水分量なんじゃないかなぁ？」とオレが疑問を呈すと、ヒロさん腕を組み「う〜ん・・・・・・・・・・・う〜ん・・・・・・・・・・ そうかもネ！」なんて簡単に折れるじゃないか。その絶妙の間のズッコケぶりが素晴らしいのだ。思っていたよりもずっとくだけた愉快な人みたいだぞ。
なんてな調子であっという間に３時間が過ぎ、お２人とも「さようなら」。時間が過ぎるのが早くて名残惜しい。ホテルにビールを買って帰り一人で飲みなおしたが、少し淋しかった。年齢も違えば職業も色々、住む所も違う人々がこうして集って楽しく酒を飲める、通信って面白いなぁ。淋しいながらもしかし、旅の終わりに眺める地図が満足感で楽しい。
本日の走行距離：３３８km
６日目
昨日は何時に寝たのだろう、ぐっすり眠ったが５時すぎに起きてしまった。テレビの天気予報を見ると名古屋では間もなく、関東でも午後から雨が降り出しそうだというので、慌てて荷造りし６時出発。ひんやりした空気の中、早朝の官庁街は人も車も、ちーとも居ない。いきなり高速に乗って帰るのももったいないので、やっぱり子供時代に住んだ知立へ行くことにした。
名古屋の道は広く、朝早いから車も少ないのだが、すぐに信号に引っかかってしまい少しイライラした。１号線まで出るのにずいぶん時間がかかり、１時間以上かかって知立に到着。去年来たばかりなので、感慨は薄い。が、様変わりした街中に田んぼを発見しホッとした。
岡崎から東名に乗り爆走。時々雨が降り焦る。単調なもんだからすぐに疲れて、もーすぐに休んじゃう。雨と追いかけっこでようやく横浜に到着。横浜のトラックは気にならないのが不思議だなぁ。家を空けていたのはたったの４日だから、帰りついてもさほど感慨は無い。家族も「あ、お帰り」、オレも「お、ただいま」ってなもんだ。しかし犬のクロだけはブリブリしっぽを振っていた。
あ！ご主人様〜お帰りなさいまし〜
オレは大丈夫だ
そもそもソロツーリングに出かけるようになったきっかけは城戸くんがビンボーになったからなわけだが、心の深い部分では「オレ様は一人でも生きていけるんだって事を証明してやる！」なんて肩肘張った気持ちがあり、一人きりでテントの中で眠るオレは、自分自身を誇らしく思ったりもした。だがね、そんな事はもういいじゃないか、と思うのだ。確かにオレは一人きりでも生きることが出来るだろうって自信がある。しかし、家族が居て、友が居る、そんな生活がやっぱり大事じゃないかい？と思うのだ。一人きりで長距離を走り体力を削る事で得るストイックな満足感もイイ。だが一生懸命一人になりたがることもあるまい。力を抜いて夫となり父となろうじゃないか。帰るところがあるという幸せを素直に受け止めようじゃないか。この先人生色んなことがあるだろうけれど、オレは大丈夫だと思うよ。しっかりした根拠があるわけじゃないけれど、うん、オレは大丈夫だと思うよ。なんにせよ、オレはオレでしかないんだもん！
いや〜東名は長かった。本日の走行距離：３４１km、全行程１５１４km
この旅で思ったこと
・このオレが寺や仏像を喜ぶとはなぁ。ふけたなぁ・・・
・ま、いいやね・・・いいのかな？
・たった６日の旅なのに、疲れ具合が今までと違うような気がするぞ。
・まだまだやれると思っても、結局オレはベイスターズの駒田なのかも。
・四国制覇まではあがこう。
・ホテルも高速もカード。便利になったもんだ。
・和歌山ラーメンは残念だったなぁ。
・「あそこは最高だったヨ！」かなんか言って誰かを４２５号線にハメてやりたい。
・どうでもいいけど毎日飲み過ぎだよ、オレ。
・妻の理解がありがたい！
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