７日目
「兼六園」やら「近江町市場」やら色々下調べをしていたのに、結局金沢では何も見ることなく出発だ。昨日の夜走った高岡からの道を逆戻り、富山も通過し日本海に沿ってズンズン走る。
デジカメ壊れる
牧さんの家のニュースで観た巨大なゴリラの人形を発見。身の丈４メーターはどあるだろうか。交通安全のたすきをかけている。なぜゴリラなのか、その必然性が全く無いのがおかしくて牧さんちで酒を飲みながらウケたのだ。こいつを写して牧さんに送ろうとデジカメを取り出すと、スライド式のレンズキャップがパコと取れ、何か小さな部品がバネと共にどこかに飛んでいってしまった。その結果キャップと連動していた電源が死亡。キャップの裏に小さなスイッチがあり、それを指先で動かさなければ電源が入らなくなった。キャップにはストロボが付いており、その配線があるために外したままにするわけにもいかないのだ。
以後デジカメを撮るときには
・まずスライド式のレンズキャップを力づくでバキッと外す
・小さなスイッチを動かし電源を入れる
・レンズキャップを丁寧に所定の位置に戻し、手を添えつつ撮る
・小さなスイッチを動かし電源を切る
・力づくでレンズキャップをバキッとハメる
と、この工程を繰り返さねばならなかったのだ。めんどうこの上なし。このゴリラ野郎め！
上越のあたりまで絶壁の道を走るのだが、トンネル等多くて海は一瞬しか見えない。ここに道を造るのにはとんでもない金がかかったに違いない。途中「タラ汁」の看板を出す店がたくさん並ぶ所があった。ソッチーが「ウマイよ」と言っていたので、早速その中の一軒に入り食べてみた。やかん色のアルミの鍋に豪快に入れられた味噌味の汁は、とても旨かった。きっと冬ならなおさらだろう。その量からすると値段も安いと言っていいのではないか。
佐渡へ行くぞ～
あらかじめ調べてあった船の時刻表をみて寺泊からのフェリーで佐渡に渡ることにした。フェリー乗り場はガラガラで少し寂しい。あまり待つことなく乗り込んで、さっそく船尾甲板のベンチに荷物を下ろしビールをぐびり。隣のベンチで同じくビールをぐびりしていたおじさんと目が合うと、「ツーリングかい？」と話しかけて来た。おじさんは寺泊から車で３０分ほどの所に住んでいるのだが、あと３週間、佐渡で仕事のための単身赴任なんだと。おじさんは重機を扱う人で、横浜に工事しに来たこともあるのだそうだ。昭和３０年代中頃には東京で集金のパシリをしていたそうだが、当時は自転車で２３区ほとんど全部を毎日廻ったそうだよ！あらら、おじさん昔話をしながらビールぐびぐびいっちゃってるよ。
ずっと話相手をしてくれたおじさんと
てな話をしているうちに、夕暮れの太陽をバックに佐渡がくっきり見えてきた。あっという間に２時間が経ったらしい。おじさんにお別れを言いすぐ上陸。降りる人も車もまばらな寺泊港は多少寒々とした印象で、遠くまで来たなぁという気持ち倍増。港から出るところに停まっていた車を追い越しざまクラクションを鳴らされたので見ると、さっきのおじさんだ。ニヤニヤ笑うその顔は真っ赤っかで、すぐに酔っぱらいだとバレちゃうぞ。それを分かってて休んでいるのかなぁ。オレは手を振っておじさんの無事を祈りつつ走り出した。
地図に載っている公園目指して東に走りだしたが、そこまで行く前に真新しい公園を発見。屋根付きのスペースも水道もある。一目で気に入りバイクを止めた。オレを警戒しているのか、こちらをチラチラ見ながら３人のオバサン方が世間話をしていたので「横浜から来ました。今夜はここで寝ますが、迷惑は掛けませんのでよろしく。」と挨拶をした。とたんに態度が暖かくなり「今夜は雨らしいヨー」なんてオバサン達ったらに急に親しげだ。「こんなに綺麗な夕焼けなのに雨が降るかってーの！」と心の中でツッコミを入れたが、あれって冗談じゃなかったのね！
オバサン方に訊いた酒屋と食料品屋でビールとラーメン＆色々買い、メインは生のアジだ。公園の屋根付きスペースにはベンチもあるが、地べたにマットを敷いてくつろぐことにする。虫も居ないし温度もちょうど良く、テントを張る必要もなさそうだ。アジをナイフでさばいて準備完了。イエ～イ！オレ様に乾杯！アジもうまいぞ！ナイターはベイスターズが断然優勢だし、気分最高！佐渡最高！
今夜の寝場所
遠～くの方で打ち上げ花火の音がした。花火の季節には早い気もするのだが、どこだろうと本州の方に目を凝らしてみる。すると遠～くの方に小～さな稲妻がくっきりと見えた。花火だと思ったのは雷鳴だったのだ。陸に落ちたのか海に落ちたのかハッキリしないが、地球のスケールを実感できたように感じ、ひとりジワジワと感動していた。その後もすごく短い周期でその稲妻は落ち続け、うっとり見守っていたのだが、その小～さな稲妻が徐々に大きくなってきているように感じ、イヤな予感。
恐ろしいよ～
予感的中、雷鳴は大きくなり、黒くおどろおどろしい雲が稲妻に照らされて瞬間的に見える。突然バラバラと雨が降りだし、屋根付きスペースにまで降り込んできた。オレはマットを中央に移動し、ナイター中継の音を大きめにして耐える。たまに当たる雨など気にするものか。だが雨の勢いは激しさを増し、水が少しずつマットに向けて流れてくる。雷はもはや「勘弁してくれ」と言いたくなるほどの真上で鳴り渡り、光ってから鳴るまでの時間が極端に短い。恐ろしくなったオレは猛スピードでテントを張った。慌てて荷物を放り込み、大丈夫だと自分に言い聞かせながらラジオに集中し、雷なんか気にしてないもんねと自己暗示。だが、稲妻が光る度、ラジオが「ザッ」と鳴るのだ。こ、こ、怖いのだ。手に持つビール缶すら「これに落ちるのではないか」と気が気じゃない。それでも酔いたいこのジレンマ。屋根から吊したランタンが揺れる。ナイターではベイスターズが負けてしまい腹立たしい。腹立ち紛れのビールも底をつき、残るは韓国激辛ラーメンのみ。この雷鳴とどろく中、なぜ激辛ラーメンを食わなきゃイケナイの
!? などと呟きつつ食ったが、汗をかき必死な感じがちょっと自分で良かったりする。オレはバカか。
ラジオが深夜番組を始めたので焦って一生懸命寝た。雷はようやく去ったようだが雨は止む気配もなく、時折テントにたたきつける雨音で目が覚めてしまう。そのまま熟睡することなく朝を迎えた。
本日の走行距離：約２６３㎞
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