4日目

 奈良国立博物館で「東大寺のすべて」というのをやっていて、一足先に観た妻が「ものすごいので絶対見るべきだ」と言うのだよ。これさえなければ岐阜なんて新幹線で行っても良かったんだ。さあ、どんなもんだか行ってみるかね。

 開館9時半の15分前に着いたが、すでにずいぶん人が並んでいた。だがよく見ると行列が延びることはなく、慌てて並ぶ必要もないようだ。ぷらぷらと公園を歩きながら待っていると5分前に人々がどっと館内に流れ込んだ。それを見てようやくオレも券を買い入場。順路の前半を抜かし、中盤からゆっくり見た。他に誰も居なかったよ。で、最後まで見てから最初に戻ると。賢いなぁ、オレ。

 普段お堂の中に居る仏像や、貴重な絵画、仏具等々「東大寺のずべて」という名に恥じない充実した内容だった。妻はさぞかし嬉しかったろうなぁ。初めて見るものはもちろん、お堂で見たことがある四天王も「間近で見ると案外小さいんだなぁ」なんて新たな発見があった。鎌倉時代の「重源上人坐像」なんかもすごい。グッと引き込まれたよ。

重源上人坐像 仏像とシカの糞を並べるなんて!



な〜んも予定無し


 さて博物館を出て考える。どこに行こうか、な〜んも決めてない。今日の宿は名古屋なので、地図上で何となく北東をなぞっていくと「剣豪の里・柳生」とあるので369号線を行くことにした。

 奈良市街地から少し走るとすぐに緑深い山道になる。車も少なく快調にカーブを楽しみながら走ってたらあっという間に柳生に着いた。うっかり八兵衛が「ご隠居〜っ!」と飛び出してきそうな店がいくつかあったが、ただオレは通り過ぎた。戦国武将同様剣豪にも疎いので、どこか見どころを探してまで観ようという気が起きないんだよ。萩に行ったときにも同じようにただ何となく通り過ぎ、後で色々本で読んだりして後悔したんだよなぁ・・・なんて事も思ったが、やっぱり素通りした。



ニンニンでござる

 地図をそのままたどっていくと、今度は伊賀上野に行くようだ。何も考えずにそのまま行ってみる。川に沿って走る163号線はトラックも多いが流れはスムースで、疲れることなく上野に到着。ここにも山の上にカッコイイ城があるので行ってみた。が、昭和に入ってから再建されたらしく(個人がぶっ建てたらしい)500円が惜しくてイマイチ中に入ろうとまでは思えない。何せこの旅で三つ目の城だもんなぁ。城は素通りして忍者屋敷に歩いていった。

 遠足で来てるんだろうか、中学生達と一緒に入場。オレら6人を案内してくれるのは「くの一」だ。しかしピンクの服で茶パツのコイツが「忍者」だというのはいかがなものか。「さあ、みなさん、『敵だ!』と叫んで下さい」なんて言うので誰よりも大声で叫んだら、ガキどもは白い目で見るし、くの一は壁にスッと隠れてしまうし、オレだって穴があったら入りてえっつーの。

 くの一から一方的に「さようならー!」とか言われると、手裏剣や巻きビシなどが展示されている資料館(?)に行くが、どうでもいいような感じでちょっとズッコケた。正直言って700円は高いと思うよ。

伊賀上野城 目立ちすぎだっつーの

爆走・国道25号線

 城山を下りてきて見つけた「旧小田小学校」の看板に反応。看板の地図を頼りに行ってみると、明治の時代のものらしい、なかなかカッコイイ校舎だ。だが入ってみると本当に小さな校舎で、展示されている教科書もなぜか昭和30年代までなので、懐かし度は低い。でもここに通った人たちはこうして校舎が残ってて嬉しいだろうね。オレの通った小学校も中学も戦前の古い建物だったけど、卒業後すぐに建て直されてしまって、もう無いもん。・・・・しかしどうしてオレはこうも懐かしがろうとしてるのかなぁ?

 25号線に乗り四日市あたりを目指す。25号線は以前天理から10キロほど乗ってブッたまげた道路だな。制限時速60キロなのにみんなスゲェ速度で走ってるのだ。オレも100キロで走ったが、それでもトラックにバンバン抜かれた。なんとも豪快な道だなぁ。結局三重県の関まで約25キロずっとこんな調子だった。警察もあえて見逃してるのかもね。

旧小田小学校 102キロで爆走中

お茶屋のおねいさん

 亀山から306号線で四日市に向かった。先ほどと一変して茶畑の中を走るのどかな国道だ。三重が茶どころだとは不勉強なもんでちっとも知らなかったよ。お茶屋さんがあったので飛び込むと、ちょいと色気のあるおねいさんがおいしい茶をくれた。ここら辺の茶は「伊勢茶」というそうだね。なんと学生時代に横浜にいたのだというおねいさんと話をすると「一人旅なんて羨ましい!」と言ってまぶしそうな目でオレとバイクを見るのだ。よっぽど「オレと二人旅しませんか?」と言おうと思ったが映画じゃないんだ言えるわけないだろっつーの(笑) ちょっと奮発して高級茶を買い「気を付けて!」という声に送り出された。走り出してから彼女の写真を撮り忘れたことに気付き猛烈に後悔し、戻ろうかとも思ったが考え直して諦めた。旅ってのはそういうもんだろ、きっと。



 四日市から名古屋へ向かう国道にはロクな思い出がないので、さっさと高速に乗った。ハイペースで名古屋市内に到着。今日の宿「KKRホテル」は何度も泊まったことがあるのですぐに見つかり、チェックイン。荷物を置いてテレビ塔目指してテクテク歩いていった。2年前に訪れたときに、雰囲気が好きだったこの辺にホームレスのテントが立ち並んでいるのを見て悲しくなったが、その時より数が少ないような気もする。しかしテント小屋は急場しのぎの物ではなく、しっかりした作りの物が増えたような気が・・・・
愛知県に突入 しっかりしたテント群

がんばれニッポン!

 テレビ塔を目指したのは「あの辺なら飲み屋があるだろう」という理由だ。この旅最後の夜だからちょいとオツな店でも探そうと思っていたが、居酒屋チェーン店みたいなのばっかだ。探す場所が違うんだろうな、きっと。こっちでもお馴染みの居酒屋に5時開店と同時にイン。慌ただしく45分間飲む。なんで慌ただしいかというと6時からワールドカップ予選リーグ「日本VSベルギー」なのだよ。グビグビと大ジョッキを2杯飲んでハイスピードで会計後コンビニでさらにビールを購入しタクシーを拾い(運転手さんも「そりゃ忙しいね〜」ってウケてた)ホテルで観戦。ものすごく白熱した試合に一人手をたたいて喜ぶが、やっぱりなんだか寂しかった。家で観たかったなぁ。

 

 本日の走行距離:たったの162q

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