3日目


 昨晩からタバコが切れていたので、その調達がてら朝の散歩をしてみた。昨日は暗くて見えなかったが、このあたりはなかなか気持ちの良いところじゃないか。「あのバイクもそろそろ買い替えを考えてたから、またここで廃車にして帰るのもいいかなぁ」などと、ヤケクソではなく大らかな気分で考えながら宿に帰ってくると、管理人さんが「行きましょうか」とオレを促し、車で昨日のスタンドまで連れていってくれた。昨日は「乾いたら何も無かったように直ることもありますよ」なんて言ってたんだけど、そう簡単にはいくまいと思いつつも一応やってみたら、なんとエンジンがかかるじゃないか!

「昨日言った通りじゃないスか!」とコーフン気味に叫ぶオレを見て管理人さんは一人「ウンウン」と納得顔だ。宿まで走ってみたが問題無い。荷物をバッグに放り込み、管理人さんに見送られ出発する。「本当にお世話になりました!行って来ます」「気をつけていってらっしゃい!」がはは。行くぜ行くぜ、旅も再開だぜ!とアクセルを廻すと
エンジンが止まり、また死亡。

「これはプラグを見てみよう」ということで、一緒にバイクを分解した。管理人さんは慣れた手つきでホイホイ作業を進める。プラグを抜く時もエアーで砂を飛ばすなんて細心の注意を払っておりオレは心強い。プラグは一応火花は飛ぶが「どうも間隔が広すぎる気がする」という管理人さんの勘 ( 自称 「神の手」) でプラグをいじり、また組み立てると、なんとバッチリ直ってるじゃん!以前よりも明らかに吹けがイイよ。管理人さんは一人「ウンウン」と納得顔だ。

「すごいよ管理人さん!デジカメも直してよ!」「それは無理」なんてふざけながらオレは本当にホッとしていた。これでなんとか続けられそうだ。昨日は「なんてツイてないんだろう」と途方に暮れていたが、プロ並の技術と勘を持つこんな人と出会えたなんて、実はかなりラッキーだったんじゃないかい?

「今度こそ本当に行って来ます」「今度こそ本当にいってらっしゃい」
ようやく晴れた青空のもと、新緑映える山に向かってオレは走り出した。

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「ライダーズ・イン雲の上」サイコー!
四国を旅してて、バイクが壊れそうになったらここに泊まろう!
(なんちて)

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 四万十川の源流は管理人さん「あまりオススメしない」そうなので、素直に四国カルストに向かった。どんどん高度を増していき、晴れてはいたが結構寒い。山の頂きに着くと秋吉台と同じような奇異な景観が広がっていた。風力発電のプロペラがその奇異な感じを増幅しており面白い。使い捨てカメラを買った。

県境 カルストの台地

デジカメを買ってもうた

 カルストを抜け県道38号で西に向かったが、細く長〜い道で疲れた。なかなか高度も下がらず寒いままだ。デジカメが直るかもしれないと全てのフタを開けたまま風に当ててここまで来たのだが、全く変化が無く悲しい。走りながらどうも気持ちがパッとしないのはデジカメのせいであり、「この際買ってしまおう」と八幡浜で買ってしまった。カードで買ったのでなおさら「このやり放題な感じは危ういなぁ」と我ながら感じた。
でも気分はウキウキだ!がはは!すまん、メグちゃん!がはは!



 佐田岬メロディーラインは何が「メロディー」なのかサッパリ分からないが、車も少なくハイペースで三崎町までずっと気持ちの良い道だった。それ以降は県道になりペースが落ちるが、景色が良く飽きない。さほど疲れることなく先端の駐車場に到着。灯台まではここから20分歩かねばならん。しかし木々の中を歩くのはこれまた気分が良かった。途中ジュースの自動販売機があったが、まったくバテてはいないので素通り。平坦な道が続いたがこの先、急坂をウネウネと下り続け、海を間近に見るところまで降りてくる。と、今度は見上げる山を登るらしく、ちゅっとウンザリした。灯台を見下ろす展望台に辿り着いた頃にはすっかり息が上がっておった。

 残念ながらうす曇りで九州は見えなかったが、左右から流れてきた潮がぶつかり合っていて、どうどうと遠くから響く波の音と、そのスケール感にしばし見とれる。

 さてしかし同じ道を帰るのがしんどい。急な下りと登りを経てぐったり疲れたオレは先ほどの自販機で飲み物を買ってしまい「なるほどこういう仕組みになっているのか」と感心した。考えてみりゃ片道20分でも往復40分だもん、結構な運動量だよな。

佐田岬

 保内(ほうち)町までこれまた同じく来た道を戻るわけだが、メロディーラインは往復でも飽きなかった。ここから今日の宿松山まではひたすら海岸線を行く。

夕焼けを見送る

 海を左に見ながらの378号線はこれまたハイペースで爽快。ここは西の海に日が沈む「夕焼け小焼けライン」と呼ばれているそうだ。ちょうどイイ具合に日が傾いてきたので道の駅「ふたみ」というところでバイクを止めた。

 考えてみればこうしてゆっくりと日没を眺めることなど普段無いことなわけで、思い起こせばツーリングの時ぐらいしか無いんじゃなかろうか。普段そんな日々を過ごしているからストレスが溜まるんだよな、きっと・・・などと考えつつ30分以上もボンヤリと、多くのアベックや家族連れたちと一緒に今日の太陽を見送った。

道の駅「ふたみ」にて クラシックの缶

 松山市内のホテルはすぐに見つかった。昨日はショボくれてけっこう酒を飲んだので、今日は飲み屋はやめておこうとホテル近くの普通のラーメン屋で普通のラーメンを食ったが、これが思いがけずなかなかウマイ。ビールを追加し、ヒマそうな店のおばちゃんと色々話すうち、すっかり気分が良くなって「飲むぞモード」だ。クラシックラガーを買って帰り、新しいデジカメをいじりながら飲みなおした。すごく気持ちが充実していた。
すまん、メグちゃん!(笑)

 

 本日の走行距離:約288q

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